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■「登頂が目的でなくなっているのでは」
しかも栗城さんはこの年の6月、ヒマラヤのシシャパンマ(8027メートル・世界14位)でケガを負っていた。登頂を断念して下山中、クレバスに落ちて右手の親指を骨折し、胸の軟骨も損傷したのだ。
体調が万全ではなく、過去3度の挑戦で一度も8000メートルに届いたことがないのに、わざわざ登頂困難なルートを選んだ。これには、児玉毅さんも首を傾げたという。
「アラスカにスキーに行ったときは、まだまだやる気満々だったんですけど……。あれ? 登頂が目的ではなくなって来ているのかな……とは感じましたね」
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■「あんな凍傷は見たことがない」
先輩の森下亮太郎さんは、栗城さんが凍傷になった後、頃合いを見計らってメールを送っている。「ご心配かけてすみません」と返信があったそうだ。
「凍傷だと聞いてさすがに心配になりましたけど、一方では『何やってるんだ? 』と腹立たしい思いもありました。冬山のトレーニングをしっかり積んでおけば、凍傷になりかかったらすぐに気づくはずなんです。『指の体温が戻りづらい。おかしいな』って。その感覚が養われていないのは、準備不足と自己管理ができていない証拠です。今の時代、凍傷は登山家の勲章にはなりません」
ある疑念を、森下さんは抱いたという。
その疑念は多くの登山家に共通していた。佐藤信二さんは言う。
「1本2本ならわかるけど、彼の場合、凍傷の境目が何本もの指にわたってきれいに一直線になってる。ああいう凍傷はちょっと見たことがないですね」
エベレスト4回目の遠征メンバーは、森下さんが副隊長を務めたころと大きく変わってはいない。森下さんは今も交流が続く隊員の一人からある情報を得ていた。
「登頂を諦めて『下りる』って言ってから、4時間も無線連絡が途絶えた、呼んでも返事がなかった、って……。何してたんだ? って思いました。それで最初は、栗城が自分で手袋を外して、雪の中に指を突っ込んだんじゃないかって……凍傷になるために、わざと……ここまでひどくなるとは想像せずに……」
その後、22時間も外にいたと知って多少は自作自演の疑念を拭ったが、そんな長時間行動すること自体、高所登山のセオリーを無視している。
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Source: アルファルファモザイク