俺は物心ついた頃から幽霊が見える。
小さい頃は、周りの目を気にせず、何も無い空間に話しかけてたから親によく怒られたし、友達にも気味悪がられた。
だから小学校低学年くらいには「あ、俺普通じゃないんだ」と理解できるようになって、人の目があるところでは幽霊に話しかける事もしなくなった。
というかそもそも、幽霊が見える事を誰にも言わないようにしてた。
あれは大学に通ってた頃だったかな。
そんな俺の決心を試すように、一人の男が現れた。
Aという男は、同じ大学の友達の一人で、人当たりの良い正直な奴だった。
そんなAには老婆の霊がいつもくっ付いてた。
俺はAと話す際いつも、その老婆に意識が向いてしまい「この幽霊は良い幽霊なんだろうか」とか考えてしまったりして、Aの話はろくに聞いていなかった。
そんな俺の様子を不思議に思っていたAは、いつしか俺を「オレが話してる時はいつも上の空だよな」と非難するようになり、あからさまに不機嫌な態度をとるようになった。
正直申し訳なかったが、俺としては、幽霊が見える体質だなんて打ち明けても信じてもらえる訳がないと思ってたから、Aにはひたすら謝るばかりだった。
そんなある日、Aと会った時、老婆の様子がおかしかった。
何というか、とても困っていて、酷くうろたえているような感じだった。
だから俺は老婆が気になって気になって、ついつい凝視してしまい……老婆と目が合ってしまった。
「あ、ヤバい」とすぐに顔を背けたけど、遅かった。
老婆は俺の顔を覗き込むように近づき、こう言った。
「ハハ、ジコ、ハハ、ジコ」
ハハジコ?なんだそりゃと思った。
でも、繰り返すごとに言葉を区切るので、すぐに「母、事故」ということだと理解できた。
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Source: 不思議ネット