ひと月くらい前、俺が夜勤の仕事をしてたときの事。
二人一組で仕事するんだが、その時の相棒は入って研修を終えたばかりの新人。
俺はそいつとは就任の時に顔合わせて挨拶した程度。愛想がいい訳でもなく、特
に個人的な付き合いがある訳じゃなかった。
で、たまたまその日そいつと組むことになったんだが、当然話題なんかない。
まあ俺も沈黙が苦手とかじゃなかったので特に話もせず待機してた。
そしたらそいつがおもむろに「〇〇さん、あんた弟いるよね?」って聞いてきた
んだ。しかもタメ口。
こいつにプライベートな話なんてしたことないし、話すつもりもなかったから、
急にそんな事言われて「は?」ってなった。ま会社の誰かが話したかもしれんけ
ど。
なんだコイツと思いながら様子を窺ってると、「離れて住んでるんだよな?」と
言った。
確かに俺は実家を出て、会社の近くで一人暮しをしている。その方が不規則なシ
フトの仕事には便利だからだ。
「だからなんだよ」と俺が警戒しつつ答えると、そいつは唐突に「あんたの弟、
今なんか怖い目にあってるみたいだぜ」と言い出した。
俺が更に不信感丸出しでそいつを見ていると、ふんと鼻先で笑いながら「嘘だと
思うなら電話でもしてみたら?」と言った。
日付も変わったあたりなので、寝てるだろう弟を起こすにもしのびない。まだ学
生だし、翌日は学校もあるし。
そう逡巡していると、そいつは飄々とした顔で「ま、信じないならそれでもいい
けど、今頃弟泣いてんだろうな」と言った。
その態度にむかっときた俺は、弟に電話をかけてみることにした。
何コールかして出なかったら寝てることにして切るつもりだった。
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Source: 不思議ネット